NEWS

ニュース

2024.12.30

トランプ元大統領がもたらしたキャプティブへの影響

 トランプ氏が2017年から2021年までの在任期間に行った経済政策や規制改革は多くの産業に影響を与えました。特に、税制改革や規制緩和は企業活動に直接的な影響を及ぼしています。我々が日々研究しているキャプティブについても、間接的な影響を受けました。

 改めてキャプティブとは、企業が自社のリスクを保険でカバーするために設立する子会社のことです。通常の保険会社とは異なり、キャプティブ会社は特定の親会社に対して保険サービスを提供し、そのリスクを引き受けます。企業にとって、キャプティブはリスク管理の手段であると同時に、税制上の利益を得るための手段でもあります。特に、グローバルな規模で事業を展開する企業にとっては効率的なリスク管理を実現する重要なツールとなります。上記を踏まえ、トランプ氏がキャプティブにもたらした影響とその大きな3つの要因についてお伝えします。

 まず1つ目は、2017年に成立した「税制改革法(Tax Cuts and Jobs Act)」に伴う影響です。この改革により、法人税率は35%から21%に引き下げられ、企業の税負担が大幅に軽減されました。キャプティブを活用する企業は、しばしば自社の保険リスクを管理するだけでなく、税制上の優遇を狙うことが多いため、非常に重要な項目となります。

 例えば、キャプティブによる保険契約で得た利益は、一定の条件を満たせば、通常の企業所得税率よりも低い税率で課税されることがあるため、法人税率の引き下げにより企業は税負担をさらに最適化できるようになりました。つまり、自己資本でリスクを管理しつつ、税制上の優遇措置を享受することが可能になったのです。

 さらに、税制改革の中では、オフショア地域でのキャプティブ設立に対する規制も見直されたため、バミューダやケイマン諸島といった税制優遇を受ける地域での設立がしやすくなりました。ただ、トランプ氏が直接的にキャプティブを推進した事実はないため、この点はご留意ください。

 2つ目は、政策の柱として掲げていた「規制緩和」に伴う影響です。金融業界や保険業界における規制の見直しが行われました。キャプティブ設立における報告義務や資本要件の緩和やコストや手間の削減がおきたことで、企業はより簡便にキャプティブを設立することができるようになりました。特に、中小企業にとってキャプティブ設立を促進する要因となりました。

 そして最後3つ目は、トランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げながら打ち出した政策に伴う影響です。アメリカ国内の経済成長を促進するため、様々な政策が企業のリスク環境に変化を及ぼしました。特に、米中貿易戦争や関税政策により、企業のサプライチェーンや市場アクセスにおけるリスクが増大したと言われています。このようなリスク環境の変化に対応するため、キャプティブを活用してリスクを分散させ、自己資本でのリスク管理体制を強化する事例が増えました。

 また、予測不能なリスクもあります。トランプ政権最後の年である2020年には、世界的な新型コロナウイルスのパンデミックがおこり、企業は前例のないリスクに直面しました。ロックダウンや経済活動の停滞は、多くの企業にとって新たなリスクを引き起こしました。旅行業界や航空業界などがパンデミックの影響を受け、業務停止や経済的損失を被った際、キャプティブを通じてリスクを管理する企業もありました。

 こうした動きから、「企業の財務健全性を保ちながら経済変動に効果的に備える手段」、「リスクに対する柔軟な対応を可能にしつつリスク管理をより効率的に行う手段」としてキャプティブの有効性が示されました。

 以上トランプ元大統領がもたらしたキャプティブへの影響の報告でした。大統領再選で注目が高まる中、今後も動向を追いかけながらキャプティブに関する最新情報をお届けしてまいります。

【参考】

 

キャプティブ設立のご相談・お問い合わせはこちら >

CONTACT US
キャプティブに関するお問合せは、
お問合せフォームまたはお電話にてお寄せください。